幸せな結末
「後悔?」
「もっと彼に優しくしたらよかった。もっと彼と話をすればよかった。行ってらっしゃいのキスの一つでもすればよかった。うんん。あの日会社に行かないでって止めればよかった。結婚していないと私は彼の家族ではなくて・・・それももどかしかったんです。」
理恵はそっと樹の手を握った。
「事故にあうことが運命で決められていたのならもっと早く結婚して子供産んで・・・彼のためにしてあげたかったことをもっともっとしてあげたかった。」
樹の瞳からは今にも涙が溢れそうだった。
「でも最近やっと、私は彼との思い出を抱きしめながら未来へ進もうって思えたんです。5年もかかりました。はじめは彼を過去に置いてきてしまったようで、彼に申し訳ない気がしてそこから進むことが怖かった・・・。」
「・・・」
「そう思えたのは湊さんのおかげなんです。彼がいなかったら私は今も過去から抜け出せないまま、亡くなった彼を想い続けて後悔ばかりしていました。きっと」
樹はそっと理恵の手を握り返し自分のお腹にあてた。
「後悔ばかりしてもどうしようもないことだってあるんですよね。その分ちゃんと前を向いて精一杯生きなくちゃもったいないです。私はきっと亡くなった彼に叱られます。自分との過去に後悔ばかりしてって。幸せな時間もたくさんあっただろうって。」
理恵に笑いかける樹の瞳から涙が次々にあふれる。
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