【極上旦那様シリーズ】きみを独り占めしたい~俺様エリートとかりそめ新婚生活~
私はあの出来事を説明した。一臣さんはますます目を見開き、ほとんど呆然としている。
「お聞きになっていないんですね」
「聞いてない。……いや」
ふと考えこむような顔つきになり、「それはいつだった?」と聞く。
「先日の土曜です。午後」
「金曜の夜、きみと食事をして帰ったあと、父から連絡があった。きみとのことを聞かれ、同居を解消したところだと伝えたんだが……」
「なんておっしゃってました?」
「いざとなったら父子の縁を切ろうと」
「えっ」
「父の行きすぎた軽口だと受け取って、なにをバカなと言ったんだが……」
コン、とデスクにカップを置く。もう空だ。
「そうか、あれは本気だったんだな」
「母に許してもらえなかったら、そうするつもりだったんでしょうね」
注ぎましょうか、とボトルを見せると、彼はカップに手でふたをするしぐさをした。もう大丈夫のようだ。
「そんなことにならなくて、よかった。父と花恋のどちらかなんて選べない。どちらも大事だ」
「私もです」
「……きみのお母さんは、勇敢だな」
「お父さまも」
一臣さんは「うん」とつぶやき、口の端をかすかに上げて、じっと考えこんでいる。曇り空から晴れ間がのぞき、背後の窓から陽光が差しこんだ。
「そうだ、さっきの録音、バックアップをとっておいてもらえないか」
「かしこまりました」
「今後、なにかと使えそうだよな。いいものが録れた」
満足そうな様子に、私も笑いがこぼれかけ、ちょっと待てよと我に返った。
「あの、録音って、いつからしてました?」
「うん?」
一臣さんが、レコーダーであろう例の小さな端末とケーブルをデスクに置く。彼の手元のスマホから、音声が聞こえてきた。
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