【極上旦那様シリーズ】きみを独り占めしたい~俺様エリートとかりそめ新婚生活~
「よかった」
「なにがです?」
「やっと笑ってくれた」
そう言って、優しく私の頬をなでる。
ろくに拭いてもいない彼の身体は水滴で光っている。素肌の熱と、重みを身体に感じる。これが一臣さんの、身体の重さ。
「笑うべきでした?」
「ずっと怖がってるみたいだったから」
「未知の体験ばかりだったので」
彼は「だろうな」と微笑んだ。
なんだかなあと思ってしまう。これがさっき、私の身体をいじり倒したのと同じ人だなんて。
他人どころか自分の手も触れたことのない場所を拓かれ、自分がそんな場所で反応するとはじめて知った。
おかしくなるかと思った。だからやめてと何度も言ったのに、「それでいい」となぜかほめられ、やめてはもらえなかった。
大人の男性の皮をかぶった悪魔だと思ったのに、今はこんな清潔そうで優しい。
と思った矢先、見下ろす顔がにやっと笑った。
「まあ、未知の本番はこのあとだと思うが」
「脅さないでください、本当に怖いんです」
急に申し訳なさそうになり、「ごめん」と私の頭を抱きかかえる。何年ぶりかで頭をなでられる感触を楽しみながら、私は「平気です」と安心させた。
「一臣さんにお任せしていれば大丈夫と思っているので」
「買いかぶりすぎだ。俺はそんな万能じゃない」
「はじめての相手も、経験があるでしょう?」
がく、と彼が首を垂れて、喉の奥でなにか唸っている。
「俺もそこまで、経験は……、あるが、ええと、言いかたが難しいな」
「あるんですよね?」
「いや、そこじゃなくて、つまり、こういうのは本当に人それぞれだから、多少経験があろうと、必ずしも……」
言葉を切って、私の顔をのぞきこむ。くつくつと笑っていたのがばれた。一臣さんは「からかったな」とむっと顔をしかめた。
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