【極上旦那様シリーズ】きみを独り占めしたい~俺様エリートとかりそめ新婚生活~
そんな彼を一瞬観察してから、一臣さんが終了の号令をかける。
「以上の中期計画を念頭に置いてプロジェクトを進めること。解散」
きっかり二十分で、週明け一発目の会議は終了した。

自席に戻った一臣さんは荒れていた。
「くそ!」
「刈宿さんのお話の件ですか?」
手帳をデスクに叩きつける様子を見て、私はガラスドアを閉めた。内密の話題が飛び出す予感がしたからだ。
「どこからあんな話が出たんでしょうか」
「あれは本当だ」
椅子に座り、一臣さんが苦々しく吐き捨てる。
「本当なんですか?」
「まだ上層部しか知らない話だ。なぜ彼が知っていたかはわからない」
「漏れた……?」
「だとしたら、なぜあそこで口にした? その手の話が最重要機密であることくらい、彼だって承知のはずだ」
眉間にしわを寄せ、片手を口元に持っていく。彼が考えこむときのポーズだ。
「率直な印象を申し上げていいですか?」
「うん」
「個人的には、あれは一臣さんへの攻撃だと思いました」
「情報力を誇示してか?」
私は「もう少し巧妙です」と首を横に振った。
「“一臣さんが知らないことを自分は知っている”と、さりげなくほかのメンバーにアピールしたんです。その情報は本当だと、あの場で認められるわけがないことを、彼も承知の上だったんですから」
一臣さんの眉間のしわが深まる。彼も気づいていたんだろう。会議の最後に爆弾発言を投げこんだことで、彼があの場の空気を一瞬掌握したことに。
「だが、なぜ……。いや、もういい。考えたって答えは出ないな」
「お茶でもご用意しましょうか」
彼は「うん」とでも言いそうに口を開きかけ、途中でやめた。デスクを挟んで、見つめあうはめになる。
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