「悪」が似合わない君と。



頭を抱えてジタバタしていると


ガララッ!!


ものすごい勢いで扉が開いた



「美花!!」



「お兄ちゃん!?」


スーツを着たまま汗だくのお兄ちゃん


いつぶりだろう…

しっかり顔を見たのは


「美花、何があったの?怪我したって?大丈夫なの!?」


真っ青なお兄ちゃんが駆け寄ってきた


「大丈夫、ちょっとしたかすり傷だから」


いや、まあ、ちょっとではないんだけど


「ちゃんと傷跡も残らないみたいだから大丈夫だよ」


それを聞いて安心したのかその場に座り込んでしまったお兄ちゃん


「一体何があったの?」


あんまり心配かけたくないので
まあ、ちょっとオブラートに包んで話した



「…そうか。その、リュードー君っていう子に助けられたんだね」

「うん…」

「夏兄さん…まさか、そんなことするなんて」




頼れるお兄さんって感じの私たちの数少ない家族


「…美花にはしっかり話してなかったね。
夏兄さんのご両親は、交通事故で亡くなったって言ってあったけど…
その事故は暴走族のバイクによる煽り運転が原因なんだ」


…やっぱり


「それで夏兄さん…かなりきてたみたいだね。
見てるからにはそんな素振り見せないけど…関係のない人まで巻き込むなんて…」

…うん


「…リュードーさんは優しいから…私を巻き込んでしまったってすごく後悔してた
本当は巻き込んだのは私達なのに…

リュードーさんはね、それこそ柄は悪いかも知れないけど、色んな人に慕われてて、むやみやたらに暴力振るうような人間じゃないんだよ」


…だからお兄ちゃんには勘違いして欲しくない


リュードーさんは

とっても優しくて、繊細で、不器用な、
普通の男子高校生



そして私の好きな人


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