庇護欲を煽られた社長は、ウブな幼馴染を甘く攻め堕とす


 リビングに入ると、お母さんがデレデレしながら桃をあやしていた。その傍には介護用ベッドに横たわるお父さんの姿。最近は調子がいいと言っていたけれど、やっぱり結婚式の時と比べたら、また少し弱々しくなったように思えた。

「お父さん、ただいま」

 私に気が付いたお父さんが、視線だけ寄越しわずかに微笑む。

「あんたたち、今日は泊まっていくんでしょ?」
「うん、お世話になります」
「夜はお兄ちゃんたちも来るって言ってたわよ。みんなで夕飯にしましょうね」

 張り切るお母さんを見ていると、思い切って帰ってきてよかったと思った。

 桃は飛行機の中ではおりこうだったし、やっぱりなんでもやってみなきゃわからないと、育児を始めてからそう思うことが増えた。
 
 人を一人育てるって本当にすごいことだと思う。私はまだたった10か月の新米ママだけれど、この短期間ですごく成長させられたと思う。
 
 今まで人に甘えることが多かった私だけれど、桃が生まれてから桃の為だったらなんでもできる、どんな難しいことにも挑戦しようと思えるようになったから。
 
 授けてくれた千晃くんには感謝しかない。


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