庇護欲を煽られた社長は、ウブな幼馴染を甘く攻め堕とす
数年ぶりに帰省すると、家の周りの雰囲気がすっかり変わっていた。家の近くにはコンビニができていて、新しい家もちらほら。道も変わっていた。
だけれど海風と潮の香りは変わらなかった。懐かしい香りに心がほっとする。私も千晃くんも海のあるこの町で生まれた。夏は当たり前に海水浴に行って、釣りなんかもしていた。今もいい思い出だ。
「ただいまー」
大きな荷物を引きずり、実家の玄関を開ける。桃は疲れたのか、千晃くんの腕の中でスヤスヤと眠っていた。
「おかえりー! キャー! 生桃ちゃんだー!」
悲鳴を上げながら出てきたのはお母さん。お母さんも桃に会うのは初めてで、この日を以前からすごく楽しみにしていた。
お母さんは眠っているというのに、千晃くんから強引に桃を奪い取る。
「写真で見るよりずっと可愛いわ~! お父さんに見せてこなくちゃ!」
そう言って桃を抱え舞い戻る。相変わらずのお母さんに、苦笑いが零れる。
しかも「なにしているの! 早くあがりなさい!」と言って、リビングのドアから半分体を出し、手招きをしている。よほど心待ちにしていたのだろう。
「ごめんね、なんかお母さん舞い上がっちゃって」
「ううん、お義母さんのああいうところ、俺昔から好きだよ」
そう言ってくれるだけで救われる。千晃くんのお母さんと大違いでちょっと恥ずかしいと思っていただけに。