庇護欲を煽られた社長は、ウブな幼馴染を甘く攻め堕とす


「ちょっと危なっかしいところはあるけれど、可愛いよ」
「へぇ、どうりで最近機嫌がいいわけですね。しかし社長が猫を飼い始めるとは意外でした。昔から猫アレルギーでしたよね? 同じ空間にいたらくしゃみが止まらなくなるって言ってませんでしたっけ?」

 よくそんなことを覚えていたなと感心してしまう。昔からの馴染みの人間というのは良し悪しだと思いながら、そんなこともあったなと誤魔化した。

「今度会わせてくださいよ」
「そのうちな」

 それだけ言うと、自席へと着いた。それを合図に桜庭が手帳を開きながら、今日の予定を俺に叩きこんできて、無防備で警戒心ゼロの猫のことは一旦頭の片隅に追いやった。

 俺が立ち上げたこの会社、PARNITION(パルニティオン)は、ウェブサイト、SNS、アプリなどの企業のデジタル方面におけるマーケティングやコンサルタントをしている。

 起業するまでは実家の会社に入り、将来会社を継ぐために経営のノウハウを学んでいた。

 だがある日、従業員が陰で話していたことを偶然耳にし、俺の価値観が180度変わった。

「どうせ三代目のお坊ちゃんがこの会社つぶしちゃうんだろうな」

 その声に驚いた。どういうことなのかと調べているうちに、同族経営は三代目がつぶしてしまうのがお決まりのパターンだと知った。

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