庇護欲を煽られた社長は、ウブな幼馴染を甘く攻め堕とす
気まずい面持ちでオフィスへと戻る。営業職の彩子は外回りがあるからといってそのまま営業先に行ってしまった。
外へ出かける用事もない私は真っ直ぐ課へ戻ってきたが、やっぱりなんとなく入りづらくて、そわそわしながらドアの影からこっそり中を覗く。
パッと見た感じ、景山くんはまだお昼から戻ってきていないようだった。ホッとするのを感じながら足を踏み入れようとした時。
「なにしてるんですか、小原さん」
背後から聞き慣れた声が届いて、ビクッと肩が揺れる。振り返れば景山くんが私を不思議そうな顔で見下ろしていた。
「あ、あの、おはよ」
「はい?」
「じゃなくて、お疲れさま」
なにテンパっているんだ。動揺しすぎだ。そもそも景山くんは私が景山くんの気持ちを知っているってことは知らないんだから、いつも通り接しなきゃ。
「か、景山くんもお昼行ってたの?」
「はい、そうですけど」
「そうなんだ。私も今戻ってきたところで、今日は日替わり定食を……」
って、こんな話どうでもいいか。他になにか話さなきゃ。でも話題がない。
「とりあえず入りません?」
必死で考えていると、私を中へ促すように背中をトンッ押された。迂闊にもまたビクッと体が浮く。ダメだ、普通に普通って考えれば考えるほど空回ってる。こんなことなら知りたくなかった。普通になんてできないよ。