庇護欲を煽られた社長は、ウブな幼馴染を甘く攻め堕とす

 コーヒーを淹れ終わり、二人で会議室へと運ぶ。あの中に千晃くんがいると思うと、心臓が高鳴った。
 
 ノックし入ると、中にはコの字になった席にうちのお偉いさんたちが並んでいて、その向かいには千晃くんとその会社の人たちが座っていた。資料をめくる音だけがする会議室は、緊張感が漂っていた。
 
 まず来客者の上座からコーヒーを出す。つまり、一番初めに千晃くんに出すことになる。

 千晃くんは私が近づくとすぐに気が付いた。とはいえ、声を掛けるわけにもいかず小さく会釈だけした。

 そんな私に千晃くんは目元だけでこっそり笑いかけてくれ、思わず顔が緩みそうになった。慌てて顔に力を入れるが、動揺しているのがバレたかも。きっと心の中で笑っているんだろうな。そう思いながら隣に座る男性にコーヒーを出す。

 その男性には見覚えがあった。メタルフレームの眼鏡をかけた彼は、空港で会ったあの人だった。

「どうぞ」
「ありがとうございます」

 しかも私に気が付いているようで、思い切り営業スマイルを向けられた。咄嗟に仕事用の笑みを貼り付けると、ふと隣から強い視線を感じた。

 ゆっくりと目を向ければ、そこには髪が長くて、ばりばりと仕事をしていそうな雰囲気の女性が私を凝視していて驚いた。


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