庇護欲を煽られた社長は、ウブな幼馴染を甘く攻め堕とす
そのことに気が付いた瞬間、目が合った。彼も驚いたように目を見開き、そして足を止めた。
「椎花?」
そして私の名前を呼びながら、こっちに近づいてくる。嘘、まさか今更になって会うなんて。どうしよう……。
「椎花、お前今どこにいるんだよ。電話もラインも繋がらないし、ずっと探してたんだぞ」
気が付くと遥斗は私の目の前にいて、私の肩を揺さぶりまくしたてるように言う。その瞬間、ひやりとした感情が湧くのを感じた。
「なぁ、答えろよ」
「遥斗、痛い。離して」
「あの時は俺が悪かったよ。だから謝りたくて家にも行ったし、何度も電話もしたのに。家、引っ越したのか?」
「うん……実は」
パンプスのつま先をを見つめたまま、おずおずとそう答える。
「なんだよ急に。それならそうと言ってくれよ。もしかしてまだ怒ってる?」
「あ、えと、怒ってはないかな」
そう言うと遥斗はホッとしたように眉を下げた。
「よかった。ここじゃなんだし、うちでゆっくり話そう。俺、今度こそちゃんと両親に会う。あの時のことも謝るから」
そう言って強引に私の手を引く。私は咄嗟に足を踏ん張り抵抗した。
「違うの、遥斗」
「違うって?」
遥斗の顔が一気に強張る。
彼は付き合っていた時から、気に食わないことがあれば顔に出るタイプだった。だから彼の機嫌を損ねないように私はいつも顔色をうかがっていたっけ。今だって私が思い通りに動かないから明らかに不機嫌そうだ。