優等生の恋愛事情
言ってきくような人たちじゃないって、もういいかげん知ってるはずなんだけどな、丸川さんも。


「なんなのよ!あの二人!私だって時間が惜しいんだから!運動部ばっかり大変だと思われると本当にむかつく!」


残ったのは私と丸川さんの二人だけ。不満炸裂の丸川さんに私は静かに言った。


「丸川さんも帰って大丈夫だよ。レッスンとか忙しいんでしょ」

「えっ」


丸川さんが音高を目指しているという話はクラスの誰もが知っていた。


体育の球技は見学だし、有名な先生のレッスンを受けに行くために早退なんてこともある人だから。


音高受験がすべての丸川さんにとって、学校はレッスンの時間を奪う余計なものでしかないのだ。


「あとはゴミ捨てくらいだから、私がやっておくよ」

「そう? それじゃあ……」

「うん」


本当にまったくかまわなかった。

“帰るわけないじゃない!私も当番だもん!”なんて台詞、はじめから期待していない。

だから嫌味も意地悪も言わない。
“結局は自分もサボるんだ”なんてね。


(さてと、ぱぱーっとやっちゃいますか)


理科室の掃除は、広くて大変そうに見えるけど、実際は机の移動なんかの力仕事がない分けっこう楽だった。

けど、絵的には今の私ってみじめかも?
みんなから掃除を押し付けられた
可哀そうな人……みたいな?


(ま、どうでもいいんだけど)

  
< 13 / 169 >

この作品をシェア

pagetop