優等生の恋愛事情
駅から彼の家へ向かおうとすると、方向的に私の学校のほうへ少し戻る感じになる。

いつもの道を、いつもとは反対方向に歩く感じ?

すると、学校から駅へ向かう桜野の人たちともすれ違ったりするわけだけど――。


「あ、コミ―とウル君だ」


遠目でなんか見たことあるなぁって思ったら、やっぱり同じクラスの友達みたい。

眼鏡が似合う知的美人のコミ―(小湊 薫)と、元気・やる気・根気のウル君(漆原 朔)。

私が見てたら、二人もこちらに気がついた。

そして、瞬間――ものすごく驚いた顔をした。


(えーと……)


私が彼氏と手をつないでいるから?

彼氏が他校だから?

そもそも、私に彼氏がいたことに驚き?

それとも、すべてがびっくり???


(そりゃまあ……うん)


彼氏いるとかみんなに言ってるわけじゃないし。

私に彼氏がいたら意外って思うのもわかるし。


(こういうときって、どうしたらいい?)


ちょっと悩む。


(ううん、どうもしなくていいのかも?)


考えすぎて、はまってしまうのが私の悪い癖。

コミ―とウル君はすぐに笑顔で手を振ってくれて、すれ違うときには諒くんに軽く会釈で挨拶してくれた。

もちろん、へんな冷やかしとかもない。


「バイバイ」

「うん、また明日ね。バイバイ」


お互いにとくに足をとめて話そうとはしなかった。

瀬野ちゃんとかなら「わぁ~!」ってなって、トークが始まりそうだけど。

コミ―はタイプが違うもの。

クラスでは普通に話すけど、恋バナや噂話できゃいきゃい盛り上がるのを見たことないし。


「クラスのお友達?」

「あ、うん」

「今のふたりって――」

「ん?」

「前に聡美さんが言ってた、すごく仕事ができる文化祭実行委員の人たち?」

「諒くんすごい!」


記憶力がいいのもすごいけど、諒くんは本当にいつも私の話を一生懸命に聞いてくれるから。


「ふたりは、つきあってるの?」

「ええっ」


(諒くん、唐突に何をっ!?)


「なんで? たぶん違う、と思うけど……」

「いや、なんとなく。そんな感じに見えたから」

「そっか……」


(諒くんにはそんなふうに見えたんだ)


私は考えたこともなかったけど。

コミ―とウル君は同じ実委だし、部活もふたりとも吹部だし、一緒のことは多いのかなとは思う。

けど、だからって……。


「僕、男子校に行って感覚おかしくなったのかなぁ」

「どういうこと?」

「“同じ学校の制服着た男女が並んで歩いていたら彼氏彼女に見えちゃう病”みたいな?」

「それは難病ぽいね」

「完全に男子校の風土病だな」


ふたりで顔を見合わせ苦笑い。


「そしたら、澤君なんて私と瀬野ちゃんとハルピンと複数人とつきあってる説浮上しちゃうね」

「困ったもんだ」


やれやれって苦笑いする諒くん。


(ああ、困ったように笑う表情もすごく好きだな……)

< 130 / 169 >

この作品をシェア

pagetop