優等生の恋愛事情
振り返ると、八代君を回収(?)し終えた諒くんと、拾われてきた八代君が立っていた。


「あ、諒くん。八代君も」

「おう。八代のお迎えご苦労さん。って、八代は重役か幼稚園児かって話だな」

「うるせえよ。これには色々と事情があってだな……」

「八代ね、サッカー部の連中と来ててさ。彼女と一緒にいるとこ見られるの嫌だから離脱したかったんだって」

「三谷、おまえっ」

「とりあえず、僕とロクちゃんと先約があるみたいなこと言って連れ出してきてあげたわけ」


(瀬野ちゃんと一緒にいるところを見られたくないって、恥ずかしいってこと?)


「あのっ、彼氏彼女で回ってる人いっぱいいるよ? 私と諒くんだって……」

「溝口さんのは桜野の常識。あと、諒と八代は事情が違うからさ。東雲の運動部って“ザ・男子校”ってノリだから」


(ザ・男子校のノリ……)


私がいまいち腑に落ちない顔をしていると、諒くんがさらりと話題をかえてきた。


「あのね、八代が礼拝堂に行きたいんだって」

「礼拝堂って……あ!合唱部の!」

「そういうこと」


(八代君、瀬野ちゃんの歌を聞きに……)


「私、案内するから。みんなで聞きに行かない?」

「ありがとう。助かるよ」

「よろしく、デス……」

「おっし!めちゃ可愛いって有名な八代の彼女を拝みに行くとすっか!」

「ロク、てめぇ……」

「もうふたりとも!聡美さんの前でそういうのやめてよ」

「「“聡美さん”!?」」


(ああ、なんかなぁ……)


六川君は私の顔をちらりと見たかと思うと、すぐにくるりと背中を向けた。

まあ、声を殺していても肩の揺れかたで笑ってるのはバレバレだったけど。

八代君はというと――ただもう信じられないって感じで唖然としてた。

でも、諒くんだけは、いつも平らかなまま。


「ほら、早く行かないと。いい席取れなくなっちゃうんじゃないの? 八代もロクちゃんも」


私、諒くんのこういうところ、尊敬するし、やっぱりとても好きだと思う。

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