優等生の恋愛事情
礼拝堂までの道順は私が説明しつつ、八代君と六川君には前を歩いてもらって、私と諒くんはその後に続いた。


「聡美さん、明日はチラシ当番がどうとかって言われてたよね?」

「うん。囲碁部と茶道部とかるた部で協力してチラシ配りしててね。私は明日が当番なの」

「じゃあ、着物とか着るの?」

「うん。私は袴のほう」

「僕、見に行ってもいい?」

「えっ、明日も来てくれるの? わざわざ?」

「ご近所さんだしね。ついでにスーパー寄って夕飯の買い物して帰るから気にしないで」

「うん!じゃあ、学食で一緒にお昼食べよう? 私、食券買っとくし。あらかじめ買っておかないと売り切れちゃうの」

「じゃあ、お願いします。楽しみだなぁ」

「楽しみだね!」


そんな会話をふたりでしていて、ふと気がつくと――。

六川君はくつくつ笑っていて、八代君は、信じられないって感じで顔を引きつらせていた……。

諒くんはもちろん何も気にしない。

私もまあ別にいいやって感じなんだけど。


(私たちって、ちょっとマイペースすぎなんだろうか……)



合唱部の歌声は、それはもうきれいで素晴らしかった。

でも――。

私はなんだか、瀬野ちゃんをまっすぐに見つめる八代君が気になって。

六川君は、八代君の視線の先にいる瀬野ちゃんを熱心に見ているし。

そうして――。

気づけば、諒くんは私のことを見ているし。

ちょっと心ここにあらずで、一生懸命に歌っている瀬野ちゃんに申し訳ない気持ちになった……。


来週は東雲の文化祭。

男子校の文化祭って想像つかないけど。


(学校での諒くんかぁ……)


考えると今から楽しみで、思わずふふふと頬が緩んでしまいそう。


「聡美さん???」


そんな私を、彼が不思議そうに首を傾げて見つめていた。




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