優等生の恋愛事情
しどろもどろになりながら一生懸命に話す私を、三谷くんが優しく見てた。


「即答して欲しいなんて……いや、無理に即答しないで欲しいというか。だから、考えてみてもらえる? ゆっくりでいいから」


三谷くんのはにかんだ笑顔。

私は胸がいっぱいで何も言えなくて。ただただ全力で頷いた。


「パピコ、とけちゃったな……」


苦笑いする三谷くんに、私もつられて笑う。


「ほんと、とけちゃってる」

「なんかごめん」


三谷くん、謝ってばっかり。ううん、私が謝らせてばっかりなんだ。三谷くんが謝る必要なんて何にもないのに。


「三谷くんのせいじゃないし。パピコはとけても美味しいんだよ。飲み物でもぜんぜんいけるもん」


半分飲み物みたいになったパピコを食べると、滑らかで甘いチョココーヒーの味が口いっぱいに広がった。


(三谷くんが私を好き。恋愛の好きって。じゃあ、私の“好き”は……)


頬も手もこんなに熱いのは、夏の暑さのせいだけじゃない。

ドキドキして、
胸がきゅうっと苦しくて。

甘酸っぱい想いが心にみるみる溢れてくる。


この気持ちに名前をつけるとしたら、それは――。


 
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