優等生の恋愛事情
「ありがとう。聡美さんに褒められるのが一番嬉しいな」

「うん」

「浴衣の製作者もさぞ喜ぶことでしょう」

「あはは。諒くんのお祖母さん、とってもセンスのいいかたなんだね。本当、すごく素敵」

「これ柄ね、十字絣って言うんだって」

「落ち着いた感じなのに、なんか可愛いね」


紺地に白の十字絣の模様が入ったその浴衣は、とても彼に似あっていた。


「聡美さんの浴衣もすごくいいね」

「ありがとう。これね、お祖母ちゃんが選んでくれたの」


黒に近い紺地に花火柄。

白やピンクの花柄とかを選ばないあたりが、さすが私のお祖母ちゃんだと思う。

私に似合いそうなものを考えて選んでくれたんだなって。


「お祖父ちゃんは金魚柄をモーレツに推したんだって。お祖父ちゃん、魚を飼うのが趣味だから」

「それで金魚柄を?」

「そう」

「おもしろいお祖父ちゃんだね」


諒くんが朗らかに笑う。

嬉しくって、私も笑う。


「まずはお参りに行って、それから夜店を見ながらこっちへ戻ってこようか」

「うん」


彼の提案に私はにっこりうなづいた。

ここはわりと大きな神社で今日は多くの人出だけれど、お参りした人ってどれくらいいるのかな?

諒くんがお参りに行こうって言ってくれたのが、かなり嬉しい。

だって、私が喜ぶってわかっていて言ってくれたに決まってるから。

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