Fairy
本当ならここで逃げるつもりだったのに、警察に言うつもりだったのに。
逃げることも出来なければ、警察にも連絡出来ない。どうしようも出来ない状況だ。


すると白髪の彼は、私に近づいて言葉を続ける。




『 Fairy…って、扉に書いてあったの見たでしょ。 』




その言葉に、私は彼の目を見ることが出来ないまま頷いた。
それを見て面白く思ったのか分からないけど、その男性はまた笑った。




『 今、ここには居ないもう一人を含めて、僕達三人は " Fairy " って呼ばれてる殺し屋なんだ。 』

「 殺し…屋……? 」




そんな彼の口から出た言葉は、漫画やドラマでしか聞いたことのないようなもので。
私が目を見開いていると、次に游鬼と呼ばれていた彼が口を開く。




『 俺が游鬼で、その人が晴雷(そら)さん。で、ここにいないのが狂盛(くもり)だよ〜。あ、もちろん本名じゃないけどね。 』




游鬼さんが教えてくれたことで、白髪の彼が名前が " 晴雷 " だということが分かった。

游鬼さんは『 えーっと 』と言いながら、そばにあったメモ帳とペンを手に取る。そして、決して綺麗とは言えない字で、それぞれの名前を漢字で書いてくれた。
その紙を游鬼さんから受け取って、しっかりと見る。


白髪の男性、晴雷さんは " 晴 " と " 雷 " と言う正反対の字が合わせられていて、優しい笑顔と、発せられる狂気的な言葉にピッタリだと思った。
晴れる空に雷と書いて、晴雷。…うん、ピッタリだ。

先程の発言でも感じていたように、銀髪の男性、游鬼さんは " 游 " び半分で人を殺すような " 鬼 " のような人なんだろう、と悟った。
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