Fairy

少しずつ、私もこの世界に慣れていかなくちゃいけない。殺し屋なんて今までは遠い存在だったけれど、それが今、自分自身なんだ。


ご飯を食べ終わると、時刻は朝の十時を回っていた。




「 あ、いけない…今日、学校があるんです。 」

『 あ、もう始まっちゃってる? 』




私は、晴雷さんの言葉に「 今日は三限からです。だから…まだ間に合います。 」と答える。
時間的にまだ間に合うし、急ぐ必要は無い。




『 じゃ、今日は俺が送ってく〜。 』




すると、ソファーの方から游鬼さんのそんな声が聞こえてきて、晴雷さんはそれに『 分かった、頼んだよ。 』と答える。
私は、游鬼さんのその言葉に甘えることにした。


昨夜眠った部屋に戻り、身なりを整える。
化粧は元々あまりしないため、特に時間がかかることは無い。服は狂盛さんが家から持ってきてくれたものを着て、玄関に向かった。
スニーカーを履いて立ち上がると、後ろに人の気配を感じて、思わず振り返る。




『 いってらっしゃい、紗來。 』




するとそこには、優しく微笑んで、先程とは違う名で私を呼ぶ晴雷さんがいた。

それもそうだ。今は、大学生の私を大学へ送り出すところなんだから。
そんな晴雷さんの隣には、作った笑顔を見せている狂盛さんが手を振っている。その笑顔に終始違和感を感じたまま、私は「 いってきます。 」と告げて外に出た。


外に出ると、空は明るくて。周りを見渡すと、明るいせいか昨日とは全く違う街のように感じた。
でも、薄気味悪いところは変わらないままだった。

キョロキョロ見渡しても游鬼さんの姿は見当たらず、私は游鬼さんを探しに行こうと足を進める。

ここから全力疾走したら、逃げられるかな…。けど、個人情報を知っているあの人達から逃げることなんて出来ないし、逃げても行く宛なんてない。
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