Fairy

…柄は俺好みって。
素直にお礼を言うことが出来ず、私は苦笑いでその言葉に返した。




『 ストーカーって面倒だね〜。誰かは検討ついてないの?その様子だと、誰にも言ってなかったんだ? 』

「 …はい。誰かは、分からないんです。 」




游鬼さんの言葉に、私はそう答えた。
そのままご飯を食べていると、晴雷さんは白いマグカップを静かに机に置き、私に話しかけてくる。




『 ストーカーって、どんな事されてるの? 』

「 えっと…学校のロッカーに、色々書かれた紙が入ってたり…。あと、よく持ち物が無くなることがあって。そしたら一昨日、バイト帰りに誰かにつけられてて…。でも急いで逃げたので、誰かは分かりませんでした。 」

『 あぁ…それで、この街に迷い込んじゃったんだね。 』




記憶を辿りながら、ゆっくりと晴雷さんに話す。晴雷さんの言葉に私は何も言わず、ただ頷いた。
游鬼さんは『 ふ〜ん…。 』と言いながら、何か考え事をしているようだった。




『 あ、そうだ。今日の夜に仕事が入ってるんだけど、紅苺も一緒に行くからね。 』

「 えっ、今日ですか? 」




夜に仕事が入っている…つまり、殺しの仕事。

初心者の私が仕事をするには、まだ早すぎるんじゃないか。そう思いながら、思わず聞き返してしまった。




『 ふふ、慌ててんの〜。今日の仕事に行くのは晴雷さんだけだし、そんな大きな仕事じゃないから大丈夫だよ〜。 』




游鬼さんはニコニコ笑いながらそう言って、私の頭をわしゃわしゃ撫でる。
優しい手つきが、彼がどれだけ女の扱いに慣れているかを物語っていた。




『 紅苺は、ターゲットを僕の言う通りに誘導してくれるだけでいいよ。始末は僕がするから。 』



晴雷さんのその言葉に少しだけ安心して、私は再びご飯を口に運ぶ。
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