Fairy

くすぐったい感覚に思わず顔を動かすと、晴雷さんはそんな私を見てクスッと笑う。




『 そのイヤホンは無線だよ。いつでも僕達の声が届くようになってるから、絶対に外したりしないこと。で、ちゃんとこうやって髪で隠してね。 』




晴雷さんは優しい口調のまま私にそう説明して、耳にかけた髪をふわりと下ろす。
そして今度は、その後ろからやってきた狂盛さんが私の首に手を回した。いきなり現れたことと、狂盛さんの取った行動にまたビクッと身体を震わせてしまう。

首元にひんやりした感触が伝わると、狂盛さんはそっと私から離れた。




「 わ、綺麗なネックレス…。 」

『 に、見せかけたカメラだよ。ほら、ここ。 』




首元を見つめながらそう呟くと、狂盛さんはそう言ってキラリと光った宝石のような所を指差した。
これが、カメラ…。すごい、こんなものまであるんだ。




『 仕事の時、この二つは絶対に身に付けること。 』




それだけ言うと、狂盛さんはリビングから出ていってしまった。

私は晴雷さんと玄関へと向かい、晴雷さんが出してくれた黒いヒールを履く。こんな高いヒールは履きなれなくて、少しよろついてしまった。




『 おっと。怪我しないように気をつけてね。 』

「 は、はい…。 」






そんな私の腕に手を添えると、晴雷さんはニコリと笑ってそう言った。

晴雷さんは昨日の夜着ていたような、黒いスーツを身につけていて。シャツも黒くて、その黒とは対象的な真っ白な肌と髪がどこか美しい。






『 じゃ、いってらっしゃ〜い。 』

『 あぁ、行ってくるよ。 』

「 …行ってきます。 」




游鬼さんの呑気な声に、晴雷さんは慣れたように返す。
私も游鬼さんの言葉に頷いて、晴雷さんが差し伸べてくれた手に、自分の手を添えた。



そして私は " 紅苺 " として、初めて夜の街に出た。








































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