Fairy
それ以上聞かれると、游鬼さんが『 甘い声で、内緒、って言えば大丈夫〜。 』と教えてくれたから、少し頑張って、大人の色気を出しながらそう言ってみる。

出せたかな、大丈夫かな、そう思っていると、朝比奈さんは頬を赤く染めて[ え〜? ]と笑っていた。




《 え、今の本当に紅苺ちゃん?そんなエロい声出せたんだね〜。 》

『 游鬼、うるさいよ。 』




無線からそんな声が聞こえるから、思わず恥ずかしくなってしまう。そして、そんな游鬼さんを止めるかのように晴雷さんが一言。
ちぇっ、といじける游鬼さんがなんだか可愛くて、思わず笑ってしまった。




[ なに、どうしたの〜? ]

「 ん? 」




それを見た朝比奈さんは、そう言って私の肩に手を回す。私が笑って誤魔化すと、もう片方の手で私の太腿に手を添えた。



実は、先程から少しずつ強いお酒を飲ませていたのだ。


これってどんな味なの?美味しい?一口だけ飲んでみたいな。なんてのを口実に、どんどん強いお酒を頼ませて一口飲んだふりをすれば、残りは全て朝比奈さんに飲ませていた。
それも、游鬼さんや晴雷さんの指示のおかげで。

それにしても狂盛さん、全然喋らないな…まあ、元々口数も少ない人だし。そう考えながら、私は一番はじめに頼んだカクテルをちびちび飲む。



この人、この後殺されちゃうんだな…。

そんなことを思ってグラスから唇を離すと、今度は冷たいグラスとは違う、暖かい感触が唇に触れた。




…あ、キスされてる。




《 紅苺ちゃん、嫌だろうけど離れちゃ駄目だよ。ここはターゲットに合わせて。 》




そう思った時、游鬼さんのいつもより少しだけ真剣な声が聞こえた。

游鬼さんにされたキスより深いそれは、どんどん私の酸素を奪っていく。掴んでいた朝比奈さんの服をキュッと握ると、彼は私から唇を離した。
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