Fairy
なんの音だろう、と思った瞬間、生暖かい液体が私の身体に容赦なく降りかかった。

気持ちの悪さに目を開けるけど、暗くてあまり周りが見えない。


すると私の目の前にいた男が、小さく呻き声を上げてドサッと倒れ込んだ。何が起こったのか分からずにいると、周りにいた男の人達が騒ぎ始めて。

同時に、私の身体は自由を取り戻す。







[ その髪色…もしかして、Fairyの游鬼(ゆき)か…? ]







そう言った男の声は、酷く震えていた。

すると『 当たり〜。 』なんて、脳天気で少し掠れた低い声が聞こえてくる。


この状況で、私は必死に頭の中を整理させた。
さっきの嫌な音は、きっと…この倒れた人が刺された音で。私が浴びた生暖かい液体は、多分その男の血液だ。
倒れた男はまだ息をしていて、刺された所が痛いのか、情けない声を出している。

目を凝らしてよく見てみると、銀色の髪をした男性が不敵な笑みを浮かべながら、血のついたナイフを持っていた。
綺麗な顔立ちをしているせいか、気持ち悪いはずなのに、なぜか美しく見えて。
雲から顔を出した月が、より一層それをはっきりさせる。




『 游鬼。俺はこの子を連れてくから、後は好きにやって構わないよ。 』




すると、その隣にいた真っ白な髪をした男性が、柔らかい声で微笑みながらそう言う。

その綺麗な顔をした笑顔は優しそうな、柔らかそうな笑顔だけど、言葉から滲み出る怖さ。
その人の後ろにもう一人、黒髪の無表情な男性がいた。
三人とも、まるで人形のような、作り物のような綺麗な顔をしていて。



恐怖に囚われながらも、私は無意識に、この三人から目を離せないでいた。

すると、白髪(はくはつ)の男性がこちらへとやって来る。




『 おいで。立てる? 』




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