Fairy




「 えっ?! 」

『 え?いや、シャワー浴びたいから。 』




さすがに驚きを隠せなかった私は、思わず声を上げてしまう。そんな私をよそに、狂盛さんは涼し気な顔でそう言った。
一見細く見えた身体は晴雷さんと同じで思ったよりがっちりしているし、筋肉も引き締まっている。
この仕事をやっていれば、きっと嫌でも鍛えられるんだろうけど。

呑気にそんなことを考えていると、狂盛さんはズボンにまで手をかけ始めた。
駄目だ、この人には恥じらいと言うものもないみたい。


私が慌てて脱衣所から出ると、目の前にはニヤニヤした游鬼さんが居た。




「 わっ、游鬼さん!びっくりした…。 」

『 どうしたの〜、そんなに慌てて。 』




バスタオルを片手に進もうとするも、目の前に游鬼さんがいて動くことが出来ない。
謝りながら「 退いて下さい。 」と言っても、游鬼さんは全くどこうとしないまま。

仕方なく横を通り抜けようとすると、肩をガシッと掴まれてしまった。




『 狂盛〜!何色だった〜? 』




游鬼さんは驚く私に目もくれず、扉の向こうにいる狂盛さんに話しかける。

…色?何のことだろう。そう不思議に思っていると、少し間を空けて扉の向こうから狂盛さんの声が聞こえた。




『 え?あー、確か黒でしたよ。 』

「 え?!ちょっ、 」




" 黒 " の言葉に、今身につけている下着の色を思い出した。
やっぱりあの時、狂盛さんに見られちゃってたんだ…。




『 えー、やっぱり黒選んだの?俺的には赤が一番好きなんだけどな〜。 』




焦っている私をよそに、游鬼さんはそんなくだらない話を始める。
私は思わず、そんな姿に笑ってしまった。




『 あ、やっとちゃんと笑った。 』

「 え? 」

『 仕事お疲れ様。明日も大学でしょ?早く寝て休みなよ〜。 』
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