Fairy

周りの生徒も私も、思わずその音にビクッと身体を震わせた｡

中には、びっくりした、と声を上げる人もいて、だんだん人が増えては図書室に視線が集まる｡
悲鳴を聞いた先生が、慌てて図書室に駆け込んだ｡




［ どうした？！大丈…ッ、うわぁあぁああぁっ！ ］




…やっぱり、何かがおかしい｡
そう思った瞬間、私は走って図書室に飛び込んだ｡




「 …ッ、？！ ｣




目の前の光景に、悲鳴の理由を理解することが出来た｡
私は叫ぶことすらできず、腰が抜けてその場に座り込んでしまった｡


だって、そこには｡




「 佐野、くん…？ ｣




大好きな人の、血だらけになった頭が机に置かれていたから｡


周りの音なんて何も聞こえなくて、見えるのは、ゆっくりとスローモーションで動く先生達｡
唯一聞こえるのは、外で鳴り響く雨の音だけだった｡


青白くなった綺麗な顔に、ボサボサになってしまっている黒髪。目は閉じられていて、まるで眠っているかのように安らかな表情だった｡

その顔に似合わない血が、彼の頭から、彼の首から垂れていた｡
彼の身体は無く、そこにあるのは首から上の頭だけ｡



一旦生徒は教室に待機させられ、昼以降の授業が中止にされた｡
警察なども来ていて、周りは落ち着かない様子｡




［ 紗來、大丈夫…じゃ、ないよね｡ ］

「 …ごめん｡ ｣




友人に声をかけられるものの、笑顔は作れなかった｡




…狂盛さんだ。


昨日の夜出掛けたって言ってたのも、きっとそうだ｡
平然と帰ってきたけど、まさか佐野くんを殺した後だったなんて｡
あの血の匂いは、佐野くんの血だったの？
どうして狂盛さんは彼を殺したのだろう、彼が何をしたと言うのだろう｡