Fairy
そう、佐野くんだ。友人はああ言っていたけど、遅れてでもちゃんと来る人だと思っていたから。
どこに行ったんだろうな、って、昼休み私は校内を歩き回っていた。




[ 先生、図書室開いてないんだけど。 ]

[ あー、それが今朝見たら鍵がなくなってて。探せば見つかるだろうから、それまで待っててくれ。 ]




ふと耳に入った、普段なら聞き落としてしまいそうなどうでもいい会話。だけど、私はどうしてもその言葉を聞き逃すことが出来なかった。

今朝の狂盛さんの言葉を思い出すと、自然と手に力が入る。
私はそのまま、無意識に図書室へと向かっていた。
私と佐野くんがいつも話をしていた、あの図書室。



まさか、狂盛さん。変なことしてないよね?

自分にそう言い聞かせながらも、私の足はどんどん早まる。同時に、もしものことを考えていた。
ズボンのポケットの中に手を入れて、鍵を取り出す。ふと周りを見渡すと、先輩や後輩がちらほら歩いていて。
私はその人達の目に入る前に、素早く鍵を床に置いた。

そのまま壁に身を隠すと、先程先生と会話をしていた生徒が偶然、そこに通りかかる。まるでその展開が読めたかのように、私の身体は自然と動いていた。


頭より体が先に動くとは、このことなのだろうか。




[ あれ?これって…。 ]




生徒はその鍵を拾って、じっと見つめながら独り言を呟いている。
そして、図書室の扉にある鍵穴にそれを差し込んだ。


…やっぱりあれ、図書室の鍵だ。

そう確信して、私は偶然通りかかった振りをして彼女の背中を見つめる。
扉が開かれると、彼女は嬉しそうに笑いながら中へ入った。









_____ キャァアアァアアアッッ!!!









それから少し間を開けて、耳を劈くような悲鳴が響く。
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