Fairy
どうして意味もなく人を殺すのか、どうしてなんの罪もない人を殺すのか。私には、まだそれが分かっていなかった。




『 あーあ、もう死んじゃった。 』

「 ……游鬼さん。 」

『 ん、なーに? 』




路地裏で泥酔しているサラリーマンを殺すと、游鬼さん呟く。それはそれはつまらなさそうに。

私が名前を呼ぶと、彼は顔に飛び散った血を拭いながら、私に笑顔を向けた。




「 人を殺すの、楽しいですか? 」

『 ……うん、楽しいよ。 』




答えるまでに大分間があったけど、彼はいつもの笑顔を浮かべたままだ。

きっと何かほかに理由があるのだろうけれど、これ以上聞かない方がいいと感じた。
きっと彼にだって、何かしらの理由があるのだろう。全てが全て遊びなわけじゃないと思うし、彼にだって感情はあるんだ。




『 さ、次行こ〜。 』




游鬼さんはそう言って私の手を引くと、サラリーマンの死体をそのままにしてその路地裏から出てしまった。


今日はどれだけ遊ぶんだろう、どれだけ遊んだら気が済むんだろう。そんなことを考えながらまた次の路地裏に入ると、そこからは何やら先客がいたらしい。

何人かの男の声に、金属バットを引きずるような振り下ろすような、そんな音。




『 …お、 』




それを聞くなり、游鬼さんは楽しそうに口角を上げながら、その奥へと向かった。

不良の溜まり場なのだろうか。近づくと、派手な髪をした男が何人もいた。恐らく誰かを集団で殴っているのだろう、そこからは、楽しそうに笑う声がいくつも聞こえてくるのだ。
私はこれ以上その場に近づきたくなかったけど、游鬼さんは足を止めないままだった。


游鬼さんがいる以上、誰かに襲われたりする心配はないから大丈夫なんだけど…。
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