Fairy




『 ねぇ、楽しそうじゃん。俺も混ぜてよ〜。 』




游鬼さんがそう言うと、男達の動きと声が一瞬にしてピタッと止まる。

そのまま彼は少しずつ男達に近づいて、手に持ったナイフを素早く男に刺し込んだ。
一人が血を流して倒れると、周りにいた男達は情けない声を上げて逃げようとしてしまう。


…逃げられるわけがない。
この游鬼さんが、遊び相手を逃がすわけがない。




『 逃がすわけないでしょ〜。よっこらせ、っと! 』




游鬼さんはもう一つ隠し持っていたナイフを取り出し、両手で二人の男を刺し殺す。
グサ、だとか、グチャ、だとか。決して気持ちの良い音とは言えないものが路地裏に響いて、気色が悪い。


気が付けば周りにいた男達は全員倒れていて、呼吸すらしず全く動かないまま。

この光景も見慣れたものだし、人間なんて簡単に死んでしまうことも、知ってしまった。
游鬼さんはナイフをポケットにしまいながら、倒れている男を軽く蹴る。




『 ちぇ、つまんないの〜。 』

「 もう充分ですよ。さっきもいっぱい遊んでたじゃないですか…。 」




まだつまらないと言う游鬼さんに、思わず呆れ気味になってしまう。

だけどその時に気がついたのは、まだ一人の青年が生き残っているということ。
見た目からして恐らく高校生くらいで、きっと、男達に集団で暴行されていたのだろう。


男達からすれば、見ず知らずの男に襲われた。
けれどこの青年からすれば、見ず知らずの男に救われた。



なんとも言えない目だった。

晴雷さんや游鬼さん、狂盛さんのようにまで黒く濁っている訳では無い。かと言って、子供のように輝きを映している訳でもない。
どうも苦手で、それでいて嫌いではない目だった。




「 …この子は、助けるんですか? 」

『 ん〜。 』




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