Fairy
なんてことを思いながら笑うと、游鬼さんは『 あっ、今馬鹿にしたでしょ。 』と私の頭をペシンと叩いてくる。
そんなことないですよ、なんて言ってみせるけど、本当は少しだけ馬鹿にしちゃった。

そっか、游鬼さんは大学に行ってないんだ。
だとしたら、晴雷さんはどうなんだろう。狂盛さんは私と同い年くらいで、ずっとここにいて仕事ばかりしているから、多分通ってないんだと思う。


皆の過去を、少しだけ知りたくなった瞬間だった。




『 じゃ、お風呂お先〜。 』

「 え、私が入ろうと思ってたのに…。 」

『 じゃ、一緒に入る? 』

「 …それはやめておきます。 」

『 ちぇ、なんだ。つまんないの〜。 』




游鬼さんが我先にと脱衣所へ向かうから、少しだけ肩を落とす。
だけど私はただ見ていただけだし、游鬼さんは今にも血を洗い流したいんだろう。そう思って私はソファーに座り直し、游鬼さんはお風呂へ入った。


そういえば、最後に誰かとお風呂に入ったのは、いつだろう。最後に誰かと出掛けたのは、いつだろう。
ここ最近はずっと一人だったし、今だって仕事で外に出ることが多くなった。
それがなんだか少し寂しくて、手に持ったリモコンをきゅっと握りしめる。

私は本当に必要とされているのだろうか、本当に才能があるのだろうか。
何度仕事を重ねても、その不安が消えることは無い。




『 最近、少し暑くなってきたね。 』

「 そうですね…梅雨が明けたと思ったら、すぐに夏ですもんね。 」




すると隣に晴雷さんが座って、さっき游鬼さんが座ったのよりもずっと柔らかく腰を下ろす。
だから、さっきみたいにソファーが勢い良く弾むことはなく、少しだけ安心した。
…それにしても、晴雷さんは凄くいい香りがする。
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