Fairy
どうやらまだ仕事の内容を整理しているようで、やっぱり大変そうだ。少しでも、なにか手伝えることがあるなら手伝いたいけど、私にはまだ何も出来ないし…。

そう思いながら晴雷さんの隣に腰を下ろすと、私の濡れた髪を、優しくタオルでぽんぽん、と叩く。
ガシガシ擦ると髪が痛むのを気にしてくれているのだろうか、そのまま『 乾かしてあげようか? 』なんて聞いてくる。その言葉に甘えながら、私はソファーを背にして座り込んだ。

晴雷さんは私の真後ろ、ソファーに腰を下ろして、ドライヤーのスイッチを入れる。




『 熱くない? 』

「 はい、大丈夫です。 」




髪にあたる暖かい風に、晴雷さんはそう訪ねてくる。
大丈夫と答えると、そのまま柔らかく髪を手ぐしした。自分で乾かす時はいつも適当で、ドライヤーの風を当てながらワシャワシャと髪を適当にしているから、なんだか変な感じ。

穏やかな笑顔と同じように、晴雷さんの手つきは物凄く柔らかかった。こんな優しい人が、暖かい手が、今まで何度も人を殺してきたとは思えないくらいに。

そして髪を乾かし終わると、丁寧に櫛で髪をといてくれた。




「 人に乾かして貰うの初めてなんで、なんだか変な感じですね。ありがとうございます。 」

『 そう?游鬼や狂盛がここに来たばかりの頃は、よくこうしてあげてたよ。今は流石にしないけどね。 』




そうなんだ…。そうだよね、三人は私がここに来るずっと前から、同じ殺し屋として仕事をしていたんだから。

游鬼さんと狂盛さんは、どうしてこの世界に入ったんだろう。
もしかしたら私と同じように、晴雷さんに拾われたのがきっかけなのかもしれない。




『 …ねぇ紅苺、たまには息抜きでもする? 』

「 息抜き、ですか? 」
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