Fairy
あまりに暖かい言葉で、思わず涙が零れてしまいそうになってしまった。だけどそれをぐっと堪えて、代わりに彼の大きな背中にそっと腕を回す。
その腕の力を強くすると、晴雷さんは柔らかく私の髪を撫でた。

人に抱きしめられるのが、こんなに暖かいなんて。
そう実感すると、ずっとこのままでいたい、と思ってしまうほどだった。




『 あーずるい!二人だけで何してんの?ねぇ、俺も混ぜてよ。今から何するつもりだったの? 』

「 あ、游鬼さん。 」




タイミングがいいのか悪いのか、そこで游鬼さんがお風呂から上がってきた。
半裸状態でタオルで銀色の髪を拭きながら、子供のように言って私達の前へとやって来る。




『 全く…。游鬼が想像してるようなことは誰もしないよ。紅苺、お風呂入っておいで。 』

「 はい。 」

『 なーんだ、つまんないの。紅苺ちゃん、欲求不満になったらいつでも俺んとこおいでね〜。 』




雷さんからふっと身体を話され、そっと髪を撫でられる。それに頷きながら立ち上がって脱衣所へ向かうと、呑気な游鬼さんの声な、後ろから聞こえてきた。
行きませんよ、なんて苦笑いで返しながらお風呂に入ると、チャポン、とお湯の音だけが響く。


一人になった空間は、楽なようで寂しかった。
最初はこんな生活なんて、って思ってたけど、今ではもうすっかり慣れたからかな。

夏が近づいてきているせいか、少し浸かっただけなのにもう暑くなってきた。だからささっと髪と身体を洗って、少しだけ温いシャワーを浴びてから出る。
時刻はもう夜中の二時を回っていて、みんな寝ているのかと思っていたんだけど…。




『 あれ、今日は早いね。やっぱり暑い? 』

「 ちょっとだけ。起きてたんですね、晴雷さん。 」




リビングに戻ると、机にパソコンを広げて頬杖をついている晴雷さんが居た。
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