Fairy
それが、游鬼さんの唇だと理解することに時間は掛からなくて、握られた手を反射的にギュッと握り返した。




握られた手と、重なり合った唇だけが熱を帯びる。


二人の唇の隙間から漏れる気泡が音を立てて弾け、その度に息は苦しくなっていく。それなのにキスは深くなっていくばかりで、私は、それについて行くのに必死。

私の口の中に入ってきたの舌が動く度、言葉では言い表せれないような感覚に陥った。




「 …ぷはっ、 」

『 あー、死ぬかと思った。 』




そしてそのままどちらからともなく水面から顔を出し、私は乱れた呼吸を必死に整える。
それは游鬼さんも同じようで、笑いながらも少しだけ苦しそうにしていた。




「 死ぬかと思った、じゃないですよ!本当に死んだらどうするつもりですか?! 」

『 人間そんだけじゃ死なないって〜。それよりさ、水の中でしたの初めてなんだけど、結構興奮するね、これ。ねぇ、もう一回しよ? 』

「 〜〜ッ、しません! 」




恥ずかしくてたまらない私をよそに、游鬼さんは悪戯な笑みを浮かべながらおねだりをしてくる。私はそれに彼の頭を叩いて返し、急いでプールから上がった。

後ろからは『 紅苺ちゃん待ってよー!見られなくて済んだでしょ! 』なんて声が聞こえてくるけど、そんなものは無視無視。
しばらくすると『 狂盛!来てー! 』なんて聞こえてくるから、遊び相手を狂盛さんに変えたんだと思う。
狂盛さんは断ることもしないままプールに入り、游鬼さんに付き合って話をしていた。




〔 紅苺ちゃん、こっち。 〕

「 ? 」




どこへ行こうかと迷っていた時、ふと白椛さんに話し掛けられる。片手には大きなバスタオルがあって、それを私の肩に掛けてくれた。
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