Fairy



…話はこれだけなのかな。

本当は、まだほかに言いたいことがあって私のことを呼んだんじゃないのかな。
そんなことを思いながらチラチラと渢さんを見ると、彼はそれを察したようにして口を開いた。




〔 まぁ良かったよ、君が優しそうな子で。 〕

「 へへ…。 」




誰でも言えるようなお世辞に、私は愛想笑いで返す。
その後渢さんは〔 本当だよ?! 〕と慌てて弁解してくるから、思わずまた笑ってしまった。

それを見て彼も楽しそうに笑ったけど、その表情は、すぐに切なくなってしまう。




〔 …あいつらのこと。目一杯、愛してやってくれよ。 〕




あまりに切なさを帯びたその声に、私は何も言わず頷くことしか出来なかった。
先程まで楽しそうだった三人も、そのせいか少しだけ苦しそうに見える。

渢さんが言った言葉に、彼の苦しそうな顔。
あの三人は一体、何を抱えているのだろうか。



答えは出ないまま、私達はプールを後にした。







































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