Fairy

すべて授業を終えて、真っ先に大学を出る｡
思ったよりも帰りは早くて、時間が余ったし…家に寄ってから行こうかな。なんて考えながら、家に着いて鞄から鍵を取り出す｡

そして、鍵をドアノブの鍵穴に差し込もうとした瞬間、私はある異変に気がついた｡
ドアノブに薄い膜のようなものが張っていて、それに白く濁った液体がまとわりついていたのだ｡


頭を働かせて、それが、使用済みの避妊道具だということに気が付く｡

もしかして、ストーカーが…？
どうしよう、家を知られてしまった。そう思うといてもたってもいられなくて、その場から走り出した｡

昨日は走るのに夢中で周りを見ていなかったため、どうやってあの街にたどり着いたのかが思い出せない。でも、ただあの場所から早く離れたい一心で、私はあの街を探していた｡


迷っていると夜を迎えてしまい、ポツポツと雨が降り始める｡
傘…持ってくればよかった。そう思いながらも、帰る気になれなくて、ただひたすら走った。ずぶ濡れになってずっと走っているうちに、見覚えのあるような建物達が見える｡

あ、もしかしてここ…｡




「 ここだ…｡ ｣




無意識にそう呟いて、私はここが昨日来た街だと確信する。おそらく、見た感じではそんなに大きな街ではないだろう｡

雨のせいで髪も服も濡れてしまっているけれど、そんなのどうでもいい。ここに来た本当の目的を忘れかけていたため、私は彼らに人を殺してないか聞くのを思い出す｡


貴方達は、人を殺してなんかないですよね｡

そのセリフを、頭の中で練習するように何度も唱える｡
すると、昨日とは違う路地裏から、何か物音が聞こえた。雨の音に混じってハッキリとは聞こえなかったけれど、私は音のした方へと向かう｡