Fairy




『 焦らないでね。万が一のことがあったら、僕達がすぐ行くから。 』

「 でも…大丈夫なんですか?顔だって知られてるのかもしれないし、何よりその髪色…目立ちません? 」

『 大丈夫。僕と游鬼は、念の為に黒のウィッグを被っていくから。 』




晴雷さんは私の髪を優しく乾かしながらそう言い、机に置いてある真っ黒の髪を指差した。
晴雷さんは白髪、游鬼さんは銀髪。そのままの髪で潜入しようものなら、顔以前にそれが目立って仕方が無いだろう。

游鬼さんは私の顔に丁寧にファンデーションを塗り、今日に眉毛を書く。少しだけ色の濃いアイシャドウを瞼に塗って、真っ黒なアイライナーで少し跳ね上げたラインを書いた。
女の私でも出来ないくらいに上手にするものだから、思わず尊敬してしまう。




『 はい、笑って〜。 』




チークを頬に乗せる時、游鬼さんは必ずこうやって言う。
だから私も、いつものようにニコッと笑顔を作る。




『 ん、可愛い〜。 』




そして、そう言いながら柔らかくチークを乗せる。
最初は照れくさくて恥ずかしかったものの、もう慣れてしまった。

晴雷さんは髪を乾かし終わると、コテを取り出して私の髪を緩く巻き始める。
髪を触られたり、顔を触られたり。なんだか眠くなってきてしまうけど、ちゃんと気を引き締めなくちゃ。

私はこれから、初めての仕事をするんだから。


もう狂盛さんに " 何も出来ない " だなんて言わせないし、自分でも何も出来ないだなんて思いたくはない。

私は、変わるんだ。




『 はい、終わり。 』




晴雷さんがそう言うと、游鬼さんも『 俺も終わったよ〜。 』と答える。
どうやら髪のセットと化粧が終わったらしく、無線とネックレス型カメラを持った狂盛さんが、こちらにやって来た。
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