Fairy
でも、その扉の前には、二人のガタイのいい男達が立ち尽くしている。

入れるはずがない、こんな男達に無事で帰されるわけがない。そう思ったのもつかの間、一瞬にしてその男達は地面に力なく倒れてしまったのだ。




「 …え? 」




情けなく漏れた声は、誰の耳にも届かない。


震えた目で男性を見ると、彼は倒れた男の服の中から鍵らしきものを取り出した。それを扉の鍵穴に差し込み、いとも簡単に扉を開けてしまう。

そのまま私と手を乱暴に掴み、私を部屋に押し込んだ。
そのせいで床に倒れ込むと、ガチャリと鍵のかかる音と共に、男性も部屋の中に入ってきている。




「 い、一体…なんなんですか…? 」




私が立ち上がりながらそう問うと、男性はフッと乾いた笑いを漏らす。その声は、先程よりも低く感じた。

そして首の当たりに手をかけ、皮膚をビリビリと捲り始めた。
最初は驚いて目を逸らしてしまったものの、それが彼の皮膚ではないことが分かる。


彼が捲っているものは、彼の本当の顔を隠すただの " 仮面 " だったんだと。




「 ………貴方、 」




パサッと音を立てて床に落ちる、ペシャリと潰れる男性の顔。
真っ白な髪が顕になり、鋭い目が私を捉えた。


そう。そこに居たのは…、













『 よう、紅苺。お前が探してんのは俺だろ? 』













孤独な殺し屋、桜翅 心だった。







































< 95 / 105 >

この作品をシェア

pagetop