明日は明日の恋をする
「何で私だけがこんな目に・・。」

さっき使い果たしたかと思った涙がまた溢れ出す。大好きな彼氏には振られ、住む所も失った。今日はなんて日なんだ。

それにしても明日からどうしよう。貯金もないから引っ越しも生活も出来ない。私の頭の中では不安だけがグルグル回る。

「取り敢えず、ココで仕事をするかしないかだが…どうする?」

社長はテレビを消して私に聞いてきた。

ハウスキーパー…家主に代わり家の事全般を行う人。果たして私に務まるのだろうか。いや、今の私には選んでる余裕はない。

「やります。詳しく話を聞かせて下さい。」

私は涙を腕で拭い、ゆっくりと立ち上がる。そして社長の前に立った。

「別に特別な事は何もない。俺がいない間に家の事をやってもらうだけだ。やる事やったら後は自由にして構わない。」

「それだけ?」

もっと小難しくて大変かと思っていたが、どうやら普通のハウスキーパーの仕事みたいだ。

「但し、条件がある。」

やっぱりか。

心の中でそう思ったが、話の続きを聞いた。

「まず、俺の部屋は何もしなくていい。絶対に無断で入るな。」

「はい。」

「それからこの家に誰が訪ねてきても応対しなくていい。無視しろ。」

「分かりました。」

「最後に、ココで仕事をする事は誰にも言うな。知ってるのは俺と高瀬とお前だけだ。いいな。」

社長に念を押され、私は力いっぱい頷く。それを見た社長はソファから立ち上がり、奥の部屋へ入っていった。
< 13 / 197 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop