My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 2


「ん? なんだ、寝たのか?」

 その言葉で自分がフィエールの右腕に全体重を掛けていたことに気付いた。
 私は慌てて体勢を立て直し気を引き締めた。しかしそれも長くは続かない。すぐに左右どちらかへ身体が傾いてしまう。

 先ほどの緊張もあってか、いよいよ身体がおかしくなっていた。気を抜くとすぐにでも意識が遠のいてしまいそうだ。

「おい、落馬したいのか。……それにしても、お前は体温が高いな。やはり見かけは人でも化け物ということか」

 その言葉に思わず首を横に振っていた。

(私は化け物なんかじゃない……!)

 ただの、ごく普通の女子高生だったのだ。この世界に来るまでは。
 ただ歌を歌ってちょっと不思議なことが起こるだけなのに、化け物呼ばわりされるなんてあまりに酷すぎる。

 知らず涙が滲んでいた。

「それとも、単に熱があるなどというわけではあるまいな」

 私はそれには何も応えなかった。体調が悪いと伝えられたとしてもこの状況が変わるとは思えない。
 フィエールはそれでも少しばかり不安になったのか、少し間を置いてから再び口を開いた。

「城に着くまでは死んでくれるなよ。お前が銀のセイレーンだということを王の前で証明せねばならないのだからな」

 そして、私を支える腕に力が入った気がした。

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