My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 2


 そんなこんなで、ストレッタに着いたのは夜が明ける少し前だった。
 学舎の特徴的なとんがり屋根が見えてきたところで小さく舌打ちが聞こえ、俺は背中にとっついたちびに訊く。

「で、どうすんだ? その姿を見られるのは嫌なんだろ? とりあえず裏の林の中にでも降りとくか?」
「あぁ、そろそろ戻る頃だろうからな」
「げっ、お前さっきみたいにいきなりでかくなるの止めろよ。マジで首折れるかと思ったんだからな!」
「仕方ねぇだろうが!」

 そして俺達はストレッタの学舎を高く飛び越え、その裏に広がる林の中に降り立った。
 丁度その直後にラグは元の大きさに戻り、俺はホっと胸を撫で下ろした。や、マジでまだ首の付け根が痛ぇんだって。グキって言ったからなグキって!

「――で、こんな朝っぱらから学長に会いに行くのか?」

 まだ暗い林の中を歩きながら先を行くラグに訊く。
 ここは術の訓練にも使われる林で、視界が悪かろうが雪で覆われていようが俺もラグも難なく進むことが出来る。

「あぁ」
「さすがに学長もまだ寝てるだろ。つーか俺もかなり眠いんだけどさ」
「部屋に戻って寝りゃいーだろ。話が終わったら即起こしに行くからそれまでだけどな」
「ったく、人使い荒ぇなぁ。今日が休みで良かったぜ。ま、カノンちゃんが心配で早く戻りたい気持ちもわかるけどよ」
「だから、」
「俺もセリーンに早く会いたいしな!」
「……あの変態のどこがいいんだか」
「アチョー!」
「いって!」

 後頭部に軽~くチョップをかましてやると前の方に乗っかっていたブゥが驚いたように飛び立った。
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