寡黙なダーリンの秘めた愛情
NICUを出て、特室に戻った。

産科専用の大部屋には、母児同室の元気なお母さんとベビーが数組いて、その姿を羨ましく思う。

今手に入れられないものを妬むのは辛い。

こんなときは一人部屋で良かったと思うのが本音だ。

「美咲、べべの名前を考えたんだ」

城之内育己(じょうのうちいくみ)

「名は体を表すだろ?少し小さく生まれたけど、周囲の力を借りながら己を育てていける、そんな男になって欲しいんだ」

「わあ、素敵な名前だね。いっくんって呼ぼうかな」

「あんまり、育己ばかりに構うなよ?俺の方が寂しくて泣いてしまうからな」

蓮が、落ち込みそうになっていた美咲に気付いて元気づけてくれたのだと、美咲にはわかった。

母児同室も羨ましいが、せっかくの育児猶予期間だ。

育己がくれた時間だと思って、とりあえずゆっくりとやすんで、今しかできないことをやっておこうと、美咲は思った。

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