寡黙なダーリンの秘めた愛情
「ねえ、美鈴ちゃんは?」

「ミスズはホテルの部屋に寝かしたよ。今からホイットニーを行かせるから心配しなくてもいい」

「私、まだ行くとは言ってないわよ。...もうジムはいつも強引なんだから、まあ行くけど」

ホイットニーはジムから美鈴の部屋のカードキーを預かると、ヒールを鳴らしながらバーラウンジを出ていった。

「問題はこいつ。ミサキが来るまで帰らないとか言っちゃって、とんだ我が儘ボーイだよ」

゛我が儘ボーイって年か!゛

美咲は脳内で突っ込みをいれたが口にはせず苦笑するだけに留めた。

「じゃあ、ミサキが来たことだし、僕はお役ごめんだ。それでは、後はよろしく」

突然日本からやって来た美咲の親戚二人を、日本に詳しいジムに押し付けた感は否めない。

空港に迎えにいってもらい、観光名所を巡ってもらって夜はささやかなおもてなしをしてもらうように頼んだ。

元々フットワークの軽いジムだから、嫌な顔ひとつせず蓮と美鈴の面倒を見てくれたのだと当時は感動していたものだが、蓮からの刺客なら 引き受けて当然だと今ならわかる。

しかし、当時の美咲はジムに対する罪悪感で一杯だった。

まさか、酔っ払った蓮に絡まれた挙げ句に、介抱までさせてしまうなんて。

美咲は2年ぶりに会う蓮にオズオズと近づいていった。

「蓮くん...?」

カウンターにうつ伏せになっていた蓮の肩がピクリと動く。

ゆっくりと持ち上がる頭。

振り返ったその男性の顔は、紛うことなき蓮の端整な顔立ちだった。

< 18 / 129 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop