あまい・甘い・あま~い彼に捕らわれて
ふらふらと気がつけばお店に来ていた。

11時をまわっているが、closeの札が下げられたお店の奥には明かりがついていて甘い香りが換気扇から漂ってくる。

香りとともに楽しそうに笑う男女の声も漏れ聞こえて胸が苦しくなる。

(こんなところまで来て何してんだろ私…)

連絡しようかと握りしめていた携帯を鞄の中にもどした。

あきらかに私は邪魔物だ。

ぼんやりとお店の裏手で立ちすくみ、どれくらいそこでたたずんでいたのだろう。

静まり返って換気扇もとめられたことにきがつき慌ててとぼとぼ歩き始めた。

「杏さん?」


不意に背後から声がかけられた。

振り向けばまだコック服に身を包んだままの彼女が目を見開き私を見つめていた。。
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