シュガーレスでお願いします!

「比呂先生」

慶太の処置を待つ間、待合室のソファに座りぐったりしていると、夜間診療の入口の方から例の現場を任せていた五十嵐先生が現れる。

「旦那さんの怪我の具合はどう?」

私はお医者様に聞いた説明をそっくりそのまま繰り返した。五十嵐先生は慶太の容態を聞くとホッと安心したように眉間の皺を指で撫でた。肩の力が抜けたのか、私の隣に座ると、背もたれに深くもたれかかる。

「葛西さんの旦那さんはどうしたんですか?」

「ひとまず事務所で拘束している。阿久津先生に応援を頼んで交代してもらった」

葛西さんの旦那さんは、慶太に怪我を負わせたことで憑き物が落ちたようにすっかり大人しくなったそうだ。今は暴れることもなく、我々との対話に応じている。

「これからどうするつもりだ?」

五十嵐先生が腕組みをしながら尋ねてくる。

警察に被害届を出すかどうか、聞いているのだ。

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