シュガーレスでお願いします!
「甘いのはもういい……」
私はシンクの縁に両手をついてしゃがみ込むとガクンとうなだれた。
パティシエ夫の愛情は砂糖よりもなお甘い。
それが贅沢な悩みだというのは重々承知しているが、本当にどうにかならないものなのか。
慶太が一流のパティシエならば、甘さの加減はお手の物だろう?
私達の間にやや温度差があるのは理解していたが、結婚後の慶太の言動は私の想定を超え、さらに酷くなる一方だ。
結婚して三か月しか経っていないが、慶太との結婚生活は私の思い描いていた夫婦像から遥かに逸脱している。
例えば、夫婦ともに公務員の共働きのうちの両親のように、家事・育児を折半し、惚れた腫れたの感情はひとまず脇に置いといて、生活共同体として家庭を健全に運営することはできないものだろうか。
間違っても朝から夫婦の営みにしけこみ、遅刻寸前で家を出るなんてことはあってはならない。