シュガーレスでお願いします!
「比呂先生。ここ、使ってもいいかな?」
「すみません。もう済みましたので」
私はその場で直ぐに立ち上がり、ドリップが終わったコーヒー豆をフィルターごとゴミ箱に捨てると、狭い給湯室のシンクを五十嵐先生に譲った。
「ああ、そんなに急がなくても良かったのに。すまない」
奥寺三兄弟の次男、五十嵐静流先生はフレームレスの眼鏡の端をクイと持ち上げ、穏やかな口調で私にお礼を言う。
阿久津先生が太陽なら、五十嵐先生は月のような人だと思う。
すっと通った鼻梁に薄い唇。涼やかな切れ長の目をフレームレス眼鏡で隠しているが、彼が誰もが振り返る美丈夫だということはこの事務所では周知の事実である。
35歳の自由気ままな独身貴族は同業者の間でも、かなりの優良物件としてターゲットにされているらしい。
阿久津先生と同じく企業法務の担当である。