君への愛は嘘で紡ぐ
彼よりも、笠木さんのほうが何倍も素敵だ。
笠木さんは絶対にそのようなことはしない。


そう思い、彼が踏みつけていた笠木さんの写真を拾う。


「円香さん……?」


土埃を払い、改めて笠木さんの写真を見る。


制服のポケットに手を入れて歩いている。
街を歩いているところを隠し撮りされたのだろう。


そんな姿すらかっこいいと思える。
写真でも、私の心は癒される。


「彼は、あなたよりも心が美しいです。侮辱しないでいただけますか」


立ち上がって彼に意見したが、すぐにしまったと思った。


私の発言は、お父様に影響する。


幼いころから教え込まれてきたことで。
だから、今まで我慢してきた。


でも、笠木さんを侮辱され、一瞬すべてがどうでもよくなった。


「円香さんは、そんな庶民に惹かれているということですか!」


鈴原さんが無駄に大声を出したせいで、視線を集めてしまった。
内容だって聞かれている。


「円香」


お父様が来ないわけない。


冷戦状態が続いていた私たちは、睨み合う。


「その写真を見せなさい」


逆らいたかった。
笠木さんのことを、知られたくなかった。


だけど、やはりできなかった。


私は躊躇いながら写真を渡す。
それを一瞥したお父様は、また私を睨む。
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