君への愛は嘘で紡ぐ
額に浮かび上がった汗を拭き取ってくれる。


「言ってくれたら、迎えに行ったのに……どうして自分で歩いてくるなんてわがまま言ったの?」


母さんも同じようなことを言ってきた。
俺の体力が尽きていることがわかっていて、車で送ろうかと言われた。


「……だって、最後だから」


最後だから、自分の足で学校に来たかった。


「あのさ、汐里さん」
「……なに」


泣いているのか、鼻をすする音が聞こえる。
半ギレのような言い方に、思わず笑ってしまう。


「呼び出して欲しい人がいるんだ」
「呼び出し?」


目を閉じると、思い浮かぶ人。
笑顔を想像しただけで、癒される人。


「……小野寺円香」


名前を言ったのに、汐里さんは黙っている。


「玲生くん、知らないの……?」


汐里さんの言いたいことがわからない。
お嬢様になにかあったのか。


「小野寺さん、急に転校したの。だから、もうこの学校にはいない」
「え……」


ただでさえ絶望していたのに、さらに下があるとは思わなかった。
頭が追いつかない。


「なんで……」
「わからない。今朝電話がかかってきて、もう通わせないって」


俺の、せいか……?
俺がお嬢様に悪影響を与えたと思われたのか……?
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