君への愛は嘘で紡ぐ
まだやりたいことがいっぱいあるのに。
お嬢様への気持ちに気付いて、もっと一緒にいたかったのに。


「一日だけ……一日だけでいい、から……外出許可ください……」


もう入院しなければいけないことわかっている。


だけど、このまま黙ってお嬢様と別れるのは嫌だ。


「一日だけだからな」
「神……」


中條先生は俺の額に拳を置いた。


「バーカ」


優しい声だった。


それからすぐあと、母さんが泣きながら病室に来た。


「……母さん、俺、もうバイトは辞めるし、学校行かないよ」
「それって……」
「治療に専念する。もう、限界ぽい」


酷い愛想笑いだと自分でも思った。


母さんは声を殺して泣く。


必死に母さんの頬に触れ、指で涙を拭った。
母さんは手を重ねてきて、さらに泣いてしまった。


そしてその日は病室で眠った。





翌朝、看護師に手伝ってもらいながら制服を着、重い体を引きずる思いで学校に行った。


着いたときには四限の途中だった。


俺はまっすぐ保健室に向かう。


「ちょっと、玲生くん!?ものすごく顔色悪いよ!?」


汐里さんに支えられながらベッドに寝たことで、ようやく落ち着いた。


汐里さんはベッドの隣にある丸椅子に座る。
< 123 / 228 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop