君への愛は嘘で紡ぐ
「睨むなよ。隠してたってどうせバレるんだから」


だとしても、他人の口から言われたくはなかった。


「本当にお嬢様ってこと……?」


今の笠木さんの台詞が、先生の疑問に答えてくれたらしい。
答えなければならないとわかっているが、ここまで来ても知られたくないという思いもあり、頷くことができなかった。


「諦めが悪いお嬢様だな」
「あ、あなたこそ、どうして約束を守ってくださらないのですか」
「あ?あー……そう言えばそんなことも言っていたな」


どうやら笠木さんは私の言ったことを忘れていたらしい。
私が一番気にしていることを、そんなことだと言った。


「……そんなことでは、ないのです」
「あっそ。まあどうでもいいんだけど」


『そんなこと』も『どうでもいい』も似たようなものだと思う。


笠木さんと話していたら、自分が考えすぎのような気がしてくる。


「汐里さん、今週の日曜、朝の八時に緑公園に来れる?」


笠木さんの中で私との会話は終わったのか、席に戻ってお弁当を食べている先生に話しかけた。
先生は何かを噛みながら壁に掛けてあるカレンダーを見た。


「もうそんな時期か。今回は私も出したいものがあるから、もう少し早めに行くよ」
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