君への愛は嘘で紡ぐ



「どうしよう……ここはどこ……?」


この歳になって、迷子だなんてとても恥ずかしい。
電車を利用して学校に来ることはできたのに、校内で迷ってしまった。


転校生ということで、私はまず職員室に向かわなければならなかった。
昇降口から校内に入るところまではよかったのだが、どこに職員室があるのかを把握していなかった。


誰かに聞けば解決することだとわかっているけど、なぜか怖くて聞けなかった。


「いいところのお嬢様がこんなところで何してんだ?」


一階の渡り廊下を歩いていたら、どこからかそんな声がした。
私は足を止め、あたりを見渡す。


「はは、上品さはどこにやったんだよ」


身分を隠しているはずなのに、そんなことを言われたから過剰に反応してしまっただけなのに、笑われてしまった。


「ここだよ」


声の主は、中庭の真ん中にある大きな木の上から降りてきた。


金髪の男子生徒だった。
校則違反ではと思うほど、制服を着崩している。
カッターシャツのボタンは全て開け、中には赤色の派手なシャツを着ている。


タイミングよく吹いてきた風でなびき、朝日に照らされる金色の髪は、とても眩しい。
その髪から目が離せない。
< 3 / 228 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop